フリーランスがサラリーマンより不利だという誤解を解いてみた

つい先日、私のTwitterで「フリーランスという働き方を辞めることにした」というBlog記事が流れていたことに、目が止まりました。

当Blogでは、なるべく他人の批判はしないよう運営するつもりです。しかし上記記事は、明らかに、もう致命的に間違った事を書いてるので、さすがに黙っては居られません。こちとら丁度、フリーランスという生き方を推奨しようとしているので、これは丁度良い題材です。このBlogの誤っている部分を、一つひとつ解説していきましょう。

※なお、フリーランスなのに銀行から300万円の融資を得たという時点で、かなり眉唾モノに思えますが、ここでは実話だという前提で話を進めます。



件のBlogでは、最後の方に、以下のような文言があります。

最近流行っているノマドフリーランスという甘い言葉に決して騙されないで欲しい。社会的信用、将来の生活保障、税金、年金。これら全て、現状は会社員の方が待遇が厚くフリーランスの待遇なんてほぼ皆無と思っていいだろう。

つまり、件のBlog主は、以下のものが全て、フリーランスより会社員の方が有利だと述べているわけです。

  • 社会的信用
  • 将来の生活保障
  • 税金
  • 年金

しかし実際は『社会的信用』以外の3つは、決してフリーランスがサラリーマンより劣ってはいません。

まず『将来の生活保障』は、一見すると会社員の方が安定しているかに見えます。しかし、近年の日本では、欧米並にリストラも盛んになってきています。正社員の数は年々減り、派遣やパート・アルバイトにどんどん置き変わっています。そしてシャープを筆頭に、NECパナソニックなど、日本を代表する超巨大企業が、万単位の人数でリストラを行っています。それでもシャープなどは、マーケット(CDSの数値など)では『倒産が濃厚だ』と見られています。もはや「終身雇用」など幻想の世界であり、大企業に就職したからと言って、将来安泰などとは言えないはずです。

無論、フリーランスとて安泰とはほど遠い存在です。しかし、フリーランスは自分の一存で、臨機応変にビジネスを変えていくことが出来ます。ダメだと感じたら、すぐにそのビジネスから撤退し、業種転換することも可能です。フリーランスなら、自由に仕事のリスクヘッジが出来るわけです。

一方で、サラリーマンは「沈みゆく泥船」だと分かっていても、会社にしがみつくしか方法はありません。このご時世ですから、思い切って依願退職しても、次に安定した就職先を見つける事は、至難の業なはずです。

さあ、果たしてどちらが将来が明るいといえるでしょうか?少なくとも私には、上記Blog主が一番上に挙げた「社会的信用」が劣っていることを差し引いても、フリーランスの機動性・融通性の高さの方が、将来にプラスに働くと思うのです。


まあ将来性については、人それぞれ好みが分かれる所です。「融通利かなくてもリーマンの方が良い」という人も居るでしょう。しかし『税金』と『年金』については、感覚の問題などではなく、金額面で明確に、もう完全・完膚無きまでに、フリーランスの方が有利に出来ています。サラリーマンの方が、税金や年金が優遇されているというのは、完全に誤りであり、Blog主の勉強不足だと言わざるを得ません。


まず税金面。例えばフリーランスの人は、自宅をオフィスにする事で、家賃や水道光熱費の一部を、事業の経費に算入することが可能です。また青色専従者といって、配偶者など家族を従業員として登録し、給料を支払う形式にすることも出来ます。こうすることで、経費を積み増して利益を圧縮=税金を減らすことが可能なのです。これは、何も脱税している訳ではなく、合法的に認められた制度です。

サラリーマンには節税する手段などほぼ皆無ですが、フリーランスは工夫次第で、大きく税金を減らすことが出来るのです。よって、税金に関しては、会社員よりフリーランスの方が、完全に有利な立場にあります。

※唯一、不利な点があるのは「消費税」ですが、年商1千万円未満の零細事業者は「免税事業者」となります。よって、フリーのWEBデザイナーの大半には無関係です。


最後の年金について。件のBlog主は、厚生年金に加入できることが『メリット』だと考えていると推測できます。そして、おそらく多くの日本人が、同様の誤解をしていることでしょう。この誤解こそが、日本人が金融音痴であることの象徴であり、私がこのBlogを通じて、皆さんに説いていきたい主題でもあります。

皆さんは、厚生年金制度が少々おかしくなっている事くらいはご存じかも知れません。実は日本の厚生年金は、完全に制度破綻を起こしており、現在50歳以下の人は計算上「払い損」になります。仮に平均寿命まで生きたとしても、支払った保険料よりも、受け取る年金額の方が、ずっと小さくなるのです。

以下のPDFは、学習院大学教授の鈴木亘氏が試算した、社会保険の世代間格差を計算した資料です。25ページに、厚生年金の世代別損得勘定の表が載っています。このPDFは、自民党の年金制度勉強会で使われた資料であり、経済雑誌等にも広く引用されている超有名なデータなので、かなり信頼の置ける数値と見て良いはずです。

http://www.taro.org/nenkinbenkyokai.pdf

・・・どうですか?このデータをみて、貴方は厚生年金に入りたいと思いましたか?

私の世代(75年生まれ)は約1400万円、今20代の人なら2千万円以上の赤字です。やってられませんわな!早い話が、厚生年金に入ることは、金をドブに捨てるような行為なのです!

会社員になれば、嫌でも厚生年金に加入させられますが、フリーランスなら入らないで済むのです。そしてフリーランスの将来の年金は、確定拠出年金を使って自分で運用するのが、ベストな方法です。確かに、確定拠出年金も運用次第では、マイナスになる確率が無い訳じゃありません。しかし、制度上「払い損」になることが必至の厚生年金に比べれば、圧倒的に有利なのは間違いありません。

私は、厚生年金に入らなくて済むことが、フリーランスにとっての最大級のメリットだと考えています。

そして、確定拠出年金こそが、フリーランスの(ひいては全ての日本人の)老後を支える、最も重要な存在になります。確定拠出年金の話は、金融の知識が必須となりますので、当Blogでも個別にカテゴリを設けて、今後詳しく紹介していこうと思っています。

とりあえず、現時点で皆さんに知っておいて欲しいことは「厚生年金に加入したら損をする」ということです。厚生年金をありがたがる人は、完全に情弱だと思っておきましょう。



以上が、件のBlog記事が「フリーランスより会社員の方が有利だ」と誤解している事についての、私からの反論です。しかし、Blog主が間違っているのはそれだけではありません。というか、もっと根本的な所で、致命的な過ちを犯しています。これは、フリーランスにとって、最大のタブーとも言える事です。

その件については・・・長くなりすぎたので次回に書きます。